OCEAN to RIVER

海の大学出身。アウトドア業界を経て、釣りの道に。

街遊びなスズキ

 

2017年秋、待ちに待ったシーズンが来た。

 

瀬戸内海に面する広島市。中国地方の中心街に流れる太田川水系。そこでは秋になると大きなスズキが釣れると釣り師の中では有名である。

 


 

昔から何気なく耳にしていた広島のスズキ釣り。スズキに対しても、スズキ釣りに関しても熱くなることがあまりなかった自分にとって、関係のない話だと思い、客観視していた。

しかし2017年、広島に拠点を移し、何を釣るかと考えたときに思い浮かんだ。

 

噂で聞いていた「大きなスズキ(ランカーシーバス)」を釣ろう、と。

 

*ランカーシーバス:釣り人の見解ではあるが、ここでは80cmを超す大きなスズキを指す。

 

最初に狙いに行ったのは引っ越したばかりの4月。

広島のスズキ釣りに関して、前も後ろもわからない僕はとりあえず釣り場に足を運んだ。

 

 

最初、半月だけ同じ勤務地にいた釣りキチの先輩によると「秋が一番釣れる」と。

 

その言葉を信じ、「秋には必ず釣るんだ。」...と活き込んだものの、いつからが秋なのかと自分の感覚と自然環境の季節感が掴めないまま10月に突入。

 

転機が訪れたのは10月中旬。

 

今まで徐に竿を振ってきた僕は考えた。「とにかく冷静に釣り場を見て回ろう」

 

今まで何気なく見てきた川、橋脚、街。

 

魚の着き場をイメージしながらコインパーキングに車を止めては、竿を持たずに見て回る、良ければ一度竿を振る。良くない場合はまた地図を見返し、次のポイントへ。

 

そんな夜を過ごしながら僕の頭の中はスズキ畑へと変化していった。

 

 

 

ある日、地図を見ながら考えた。ベイト(捕食物:小魚,甲殻類等)は川の上流か下流か。

 

目星をつけたのは下流

僕の家から40-50分ほどかかる場所だった。

 

そこに行くまで別の場所を探しながら向かったので着いたのは結局深夜12時頃。

 

何気なく結んだブラックバス用のビッグベイト。川の釣りに関しては得意ではなかったが橋のライトに照らされた明暗部にルアーを通すことができた。

 

その数投目だった。

 

明暗部にちょうどルアーが差し掛かった時、竿を通して強い衝撃に襲われた。

 

反射的に体が反応したが、合わせたと同時に途中で糸が切れた。

 

 

糸が高切れしたショックで頭が真っ白になる。なぜ切れた...

 

その直後、

ガバガバッ!! 水面が割れた。

 

ショックを受けていた僕の目の前で、今までに見たことない大きさのスズキが僕のルアーを咥えたままエラ洗いをして大きくジャンプした。

 

 

悔やんでも悔やみきれない僕は釣りたい一心でこう考えた。

「今日だ、今日しかない。」

 

 

しかし、今の道具では歯が立たない。

新しい糸を買うお金も持ち合わせていない。とにかく家に帰って道具を変えないと。

 

焦る気持ちを抑えて、来た道をまた4-50分かけて帰った。

 

 

家に着いて一番に探したのは糸。隈なく探したが新しい糸は持ち合わせていない。そこで見つけたのは3年前にカンパチジギングで使っていた使い古しのPE3号。

もうやけくそになって先ほど使っていた糸を全部捨て、使い古しのPE3号を100m巻いた。というか100mしか入らなかった。

 

次に探したのはルアー。

先ほど使っていたような大きなルアーはそれほど持っていなかったので、家の隅から隅まで探し、目を付けたのはGT用ルアーの入ったルアーボックス。

 

そこに入っていた大きなミノーを幾つか持ち、また家を出た。

 

車を飛ばして向かったのは大きな魚を逃したあの場所。

 

 

同じ魚とは言わないがまた釣れてくれると信じて...。

 

 

釣り場に着いたのは深夜3時過ぎ。この2-3時間ほどでかなり潮位が変わってしまった。

 

それでもベイトはまだいた。

 

 

 

結んだルアーはGT釣りの時に持って行っていた大きなミノー。糸はPE3号。

 

 

再開した一投目。反応はない。

 

 

二投目、明暗部ギリギリを通したとき...

 

 

ゴゴッ

 

 

 

鈍い当たりを感じた。

 

スズキだ。

 

 

逸る気持ちを抑え、無事にランディング。

 

デカい、デカすぎる。

今までに見たスズキのなかでは一番大きな魚体。

 

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この魚は85センチを超す自己最大のスズキだ。

 

ここからは大きなミノーから一般的なスズキ用ルアーに付け替え、70cm超え、60cmと釣れてくれた。

 

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僕にとっての記録級のスズキと出会えたこと。それが誰からか聞いた場所でも、聞いた釣り方でもなく、自分の目で見て、足で稼いで、釣り試して、辿り着いた一匹であること。

陸からの釣りの醍醐味を味わえたことにとても幸せな気持ちになった。

 

また、街中の川でこんな魚と出会えるだなんて...、街遊びの似合わない僕が最高な街遊びを見つけた。

 

 

そして、仕事が終わってから明け方まで釣りした僕はそのまま職場へと向かった。

 

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